無理して頑張って働かなくてもよくなったとき人はどうするのか、というとほとんどの人は、ダラダラ暮らすだろう。お金のかからないゲームをしたり、本を読んだり、ネットサーフィンしたり、といまと変わらない。ただ、飽きるので、今よりはクリエイティブなこともするだろう。ゲームを作ってみたり、本を書いたり、ブログやSNSをはじめたり。だが、「プロになって、これで食べていくぞ」という気持ちは起こらないだろう。世に出て赤の他人から批判されたり評価されたりなんてバカバカしい。そんなことしなくても食べていけるのに。
つまりベーシックインカムの時代には、ハングリー精神がなくなる。
たとえばユーチューバーになりたい、という子がいたとする。でも、ベーシックインカムがあるから、ユーチューバーにならなくてもいい。なって世間に迷惑をかけるような過激なことをやる必要もないし、顔をさらして名を売る必要もない。絶対に有名になってこれでお金稼ぐぞ、稼がないとヤバイ、という切迫感はない。
だいたい多くの人が働かなくなって可処分所得が減るので、そうなると巡りめぐって広告収入も減ることになり、有名になってもさして稼げなくなる。
なんであれ、事業というのは、ある種の切迫感がないと、ブレイクスルーは生まれにくい。冴えなくて、お客も入ってないのに長年潰れないお店というのは、そこが自社保有の物件で家賃負担がなく、さらに他にも不動産を保有していて、そちらからの家賃収入があったりするものだ。
ベーシックインカムが貢献するのは、人に夢を与えるという方向よりも、泥棒が減るとか、ブラックな働き方が減るとか、そういったマイナス面を減らす方向だ。
いま、「やりたいことがあるけど仕事のためにやる時間も金も無い」という人たちがいて、そこにベーシックインカムが導入されたとき、おそらくほとんど全員の「やりたいこと」が消えてしまうだろう。