2010年09月28日

1-12 損益計算書のおさらい

前回の記事 1-11 人的コストと資本コスト

 お金というのは、人の手から手へと移動するわけです。
 どこかでは労働に対する報酬になり、どこかでは投資に対する報酬になっているということです。
 突き詰めるとそういうことなんです。
 それを「会社にとっての性質」でいろいろと分類すると何か見えてくるんじゃないか、というのが会計なんですね。

 会計力あれば尚可。
 会計力とは、自分が何にお金を使っているのかしっかりと認識できる力、ということかもしれません。さらには、自分が使っているお金が世の中をどのように回っているのかぼんやりとイメージできるってことかもしれません。


 ここで、軽く損益計算書の概要についておさらいしておきたいと思います(一般的な、売上・売上原価スタイルの損益計算書について説明しますが、営業収益・営業費用スタイルも意味するところは同じです)。

 まず一番上に記載されてるのが売上高です。
重要な項目なのですが、売上はあくまで結果である、という認識を持っておくことが大切だと思います。お客さんあっての売上で、自分ではコントロールすることはできません。

 次に、元手である売上原価。そして成果としての売上総利益です。
元手と成果を足した金額が、結果としての売上高です。

 そして、努力としての販売費及び一般管理費です。
元手に対して努力をして、成果を獲得する、という構図です。

 その成果から努力を引いたものが営業利益です。
「本業の儲けを表している」と説明されることが多いと思います。その理解で大丈夫です。
 
 ただし注意がひとつ。「利益」というと残ったものという印象があるのではないでしょうか。「これこそ結果ではないか」と思われるかもしれません。
 しかし、利益を捻出するために元手や努力を減らすことができます。そもそも従業員の取り分と株主の取り分の配分の問題です。
 したがって、利益には経営者がコントロールできる余地が多分にあるのです、ということを覚えておいてください。

 損益計算書を見ると、営業利益の下にもいろいろと項目が並んでいますが、これ以降については、興味があったら勉強してみてください……、ゴホン、少し説明すると、営業利益から下の項目で重要なのは、法人税等です(法人税、住民税及び事業税をまとめて法人税等と呼びます)。
 なので、営業利益から法人税等を引いたものが当期純利益である、というざっくりとした理解をしておけば大丈夫です。逆に言えば、営業利益と当期純利益の間で、法人税等以外に重要な項目があったら、何か普通じゃないことが起こっているサインですから、突っ込んで調べてみてください。


とりあえずこんなところで、終了です。

 
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1-11 人的コストと資本コスト

前回の記事 1-10 元手を減らし、さらには努力も少なくする

 このように労働者や仕入先、そして正社員を苦しめないためにも、経営者には会社を強くすることが求められています。特に日本の経営者には、価格競争に巻き込まれない製品やサービスを作ることが求められていると言えるでしょう。単なるモノづくりから脱却しなければなりません。

 つまりお客様に愛される製品やサービスを生み出すことが、経営者に求められている成果です。これができなければ、経営者は会社から追い出されてしまうわけです。

 誰に追い出されるのか。
 もちろん株主です。会社の所有権は株主にあるからです。

 「会社は誰のものか」という議論がなされることがあります。利害関係者はたくさんいるわけです。やはり「株式会社を所有しているのは株主である」ことをしっかり押さえて議論しないと、話の筋がブレてしまうでしょう。

 株主は自分の財産の運用を経営者に任せているのです。この株式会社の大原則を忘れるわけにはいきません。
 だから経営者には、財産の運用責任があるわけです。
 そして株主は、自分の財産をうまく運用できる人材を選択するのです。

 と、こんな当たり前の話をしたのは、すべては人的コストと資本コストに集約される、というお話をするためです。

 人的コストとは、従業員の給料や福利厚生などのことです。
 資本コストとは、・・・わかりますか?
 資本コストという言葉は聞きなれないかもしれません。
 とりあえずここでは、資本コストとは株主の取り分である、と考えてください。そして資本コストの源泉は利益です。

 実は資本コストという概念は、日本では長らく無視されてきたものです。そのためご存じない方も多いのです。
 会社というのは株主の財産を運用する仕組みです。なので本来であれば、株主が得るべきリターンを考えることは最優先事項とも言えます。
 しかし、この「株主が得るべきリターン」が非常に見えにくいものだったため、あたかも存在しないように扱われてきてしまったのです。

 では株主の得るべきリターンとは何か。
 それは、まず配当金。しかしそれだけではありません。株式の売却益もあります。つまり、株主の得るリターンとは、株主が自分の投資に対して期待する収益全体のことです。
 ポイントは、「期待する」というところです。
 なので、株主によって異なるのです。ある株主は15%の投資リターンを期待し、ある株主は8%のリターンを期待し……、というのが実際のところです。

 えっ、そんなの考えて株主になってない? これからは少しずつ考えるようにしてみてください。実はこの資本コストが、株価に大きな影響を与えているんです。ここでは、詳しい話はしませんけど。 
 

 一方の人的コストとは、取引に関わったすべての会社の従業員の取り分である、と考えてください。経営者も含まれます。ポイントは、「すべての会社」というところです。

 さて、すべては人的コストと資本コストに集約される、という話です。先ほどの「給料」の説明のところで、販売費及び一般管理費になるものと売上原価になるものがある、と言いました。

 つまり会計では、様々なお金の動きを「その会社にとっての性質」で分類するわけです。
 
 たとえば材料費というものがあります。材料を購入したときに払った代金をもとに材料費は計算されます。当たり前ですよね。

 しかし、突き詰めて考えると、材料費も人的コストか資本コストのどちらかになるんです。

 材料を購入した会社にとっては材料費です。しかし仕入先から見れば売上ですね。これは仕入先企業の従業員の給料になったり、残りは利益になったりします。給料以外の費用については、やはり他の会社の売上になり、誰かの給料や利益になります。

 単純に言ってしまうと、「お金を要求するのは人だけ」という話なんですね。

 材料はお金を要求しません。たとえば石油自身はお金を要求しません。それを採掘した人や、仲買人がお金を要求するわけです。そして、その会社に投資した人も、リターンを要求するわけです。

 自分が働いて受け取るお金は人的コスト。
 お金を働かせて受け取るお金は資本コスト。

 
 買い物するときに考えてみてください。
 自分が何にお金を使っているのか。

 それは誰かの給料になり、誰かの投資リターンになるんですね。

 消費者も経営者も同じです。僕たちは、モノやサービスそのものにお金を払っているわけではないんです。その背後にある人的コストや資本コストにお金は回っていくわけです。 

 特に経営者の方は、資本コストを忘れないようにお願いします。

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2010年09月21日

1-10 元手を減らし、さらには努力も少なくする

前回の記事 1-9 販管費の「給料」と売上原価の「給料」


 工場労働者の話に関係して、現在起こっている労働者の派遣切りや失業問題について、分析してみたいと思います。

 不景気でモノが売れないとはどういうことかというと、需要が激減してしまって販売数量が減ったり、値下げしないと売れないということですよね。

 どんなに努力しても成果があがらない、というお手上げ状況です。

 「いや、そんなはずはない。何か良い策があるはずだ」という意見はもっともなんですが、実際には何か良い策をひねり出す前に、次のようなことが起きることが多いでしょう。

 つまり、どんなに努力しても成果があがらない場合に何を考えるかというと、「無駄な努力をしてもしょうがないな。どうせ作っても売れないんだから」というので「元手」を少なくするわけです。
 部品や材料の購入にもお金が当然かかりますから、それらの仕入れを減らします。
 そして、「元手」のひとつである「労務費」も削減することになるわけです。これが派遣切りや失業問題ということです。

 さらに、元手を減らしても利益が出ないときには、「努力」を減らすことになります。少ない努力で今までと同じ成果をあげてもらおう、ということです。いわゆる「正社員」を減らすわけです。

 しかし、不景気でなくてもこの問題は起こります。

 この会社が成果を200億円から250億円に増やしたいと考えたとします。120億円の努力に対して250億円の成果をあげ、営業利益を80億円から130億円にアップさせたい。株主の期待にもっと応えたい、と考えたとします。

 売上総利益を250億にしたい場合、元手が一定の状態で売上を1050億にアップさせるか、あるいは売上原価を750億にダウンさせる必要があります。
 元手が一定の状態で売上をアップさせるというのは、製品を値上げするということです。
 一方、元手を750億にダウンさせるというのは、部品や材料の仕入れ値を低くおさえるか、労務費を下げるということです。

 どちらがやりやすいか、という話です。

 値上げというのは、今の時代では大変困難なことでしょう。値上げしても売れる製品を作ることができたら、その会社はかなり強い。

 となると、元手を減らそうとなるわけです。

 部品や材料の仕入れ値を低くおさえるというのは、仕入先に苦労を強いるということです。下請企業が苦しくなります。
 労務費の削減というのは、自社で雇用している労働者を苦しめることになります。

 ここまでやっても、成果が230億までしかいかなかったとしたら、次は営業利益130億を目指すためにやることは、「努力」を減らすことです。少ない努力でより多くの成果をあげてもらおう、というわけで、「正社員」を苦しめることになります。

 
posted by TT at 15:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 会計力あれば尚可 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする